AI活用とは、すべてをAIに置き換えることではありません。ルールで書けない領域だけをAIに任せる、設計の話です。
RPAとAIは、互いの裏返し
得意と苦手が裏返しなので、分業が成り立ちます。決まったことは決まった方法で処理し、決まっていないことだけ判断を仰ぐ。熟練者が定型業務を手際よくこなし、想定外のときだけ上司に相談する構造を、システムで再現します。
三層と、それを貫く統制
RPA ― 正常系
手順が決まった部分を、速く、安く、確定的に実行します。
AI ― 異常系の一次対応
書ききれない例外を引き受け、判断や提案を返します。
人間 ― 責任を伴う判断
AIが判断しきれないものを引き取ります。判断の教師であり、権限を委ねる決定者です。
人間は「自動化できなかった残り」ではなく、最初から責任を持つ層として設計に入れます。ログ、許可する操作の限定、リトライの上限といった統制は、独立した層ではなく、三層すべてを横に貫く仕組みとして置きます。
なぜ、正常系を先に確定するのか
業務フローを書くときは、正常系を確定させてから異常系を足します。本設計も同じ順序をとります。正常系が曖昧なままAIを入れると、AIは何が正常かを知らないので、異常の判定そのものがぶれます。「AIに任せればいい感じにやってくれる」がうまくいかないのは、このためです。
「育つ」とは、境界が動くこと
デジタル社員は育ちます。育つとは、RPAとAI、AIと人間という二つの境界が動くことです。AIが拾った例外が定型化すればRPA側へ、人へのエスカレーションの履歴がパターン化すればAI側へ。判断が、上から下へ流れ落ちていきます。
目指すのは、組織の知が垂直(現場と判断者)・水平(担当や部門)・時間(過去の判断が今に効く)の三方向に、劣化せず、瞬速で流れることです。